皆さんは、子供の頃に連れて行ってもらったデパートを覚えていますか?
屋上には小さな遊園地があって、最上階には大食堂があって。おもちゃ売場でさんざん粘ったあと、レストランでお子様ランチを食べる。あの一日、今でも何となく覚えているんですよね。
私はああいう雰囲気が好きで、時々YouTubeで昔のローカルCMを眺めています。先日もそんな調子で、少し気になるものを見つけました。
それが、こちらです。
「まほろば百貨店」のCM
まほろば百貨店。皆さんはこのお店、ご存知でしょうか。少なくとも私は、聞いたことがありませんでした。
でも、何でしょうね。初めて見るはずなのに、どこか懐かしい。昭和の地方百貨店のCMって、こんな感じだったよなあ、と。
ただ、一つ気になることがありました。
この「まほろば百貨店」、
いったいどこにあったのでしょうか?
調べても、出てこない。
気になったので、少し調べてみることにしました。
地方の老舗百貨店なら、今は閉店していたとしても、昔の写真や新聞記事、あるいは地元の人が書いたブログくらいは残っていそうです。
ところが、どうもよく分かりません。私が調べた範囲では、この名前の百貨店がどこで営業していたのか、確かな手掛かりを見つけられませんでした。
昔、どこかにあったお店なのか。それとも、誰かが懐かしい雰囲気を再現して作った架空のCMなのか。
今の技術なら、こういう映像を作ることもできそうです。それにしても、ずいぶん手の込んだものを作る人がいるものだな……と思っていました。
ところが。
公式ホームページがある。
さらに調べていると、妙なサイトを見つけました。

なんと、まほろば百貨店の公式ホームページです。
https://matsaman.shop/mahoroba/ (新しいタブ)
……いや、あるんですね。公式ホームページ。
小さなメニューボタン、罫線で区切られた表、控えめな文字の並び方。昔のインターネットを知っている方なら、懐かしく感じるのではないでしょうか。
2000年代初頭にタイムスリップしたようなホームページです。
しかし驚くのは、デザインだけではありません。フロア案内、催し物、会社案内、大食堂、屋上遊園地……。とにかく情報が細かいのです。
会社案内には、創業年、資本金、従業員数、沿革まで載っています。私には実在を確かめられなかった百貨店なのに、妙に具体的です。
ところどころ、何かがおかしい。
ただ、このサイト。よく読むと、あちこちに不思議なところがあります。
トップページにはこんな表示があります。

昭和100年?
昭和は64年で終わったはずですが……。そのまま数え続けると、西暦では2025年になります。単に何十年も放置された古いホームページ、というわけでもなさそうです。
会社の沿革にも、昭和72年、昭和83年、昭和96年という年号が、当たり前のように登場します。
もちろん、架空の百貨店という設定のジョークサイトなのかもしれません。しかし、ページ全体があまりにも普通の百貨店として作られているのです。
まるで、この百貨店が今でもどこかで営業しているかのようです。
館内写真も、何か変だ。
もう一つ、気になることがあります。このホームページには、各階の写真が掲載されています。
屋上遊園地に、大食堂。いかにも昔のデパートという風景です。こういうところ、子供の頃に行った記憶があるような気がします。
ただ、見ていると妙な気持ちになってきます。
写真に人がまったくいない、というわけではありません。でも、賑わいよりも、遊具や椅子が並ぶ空間の静けさが気になります。楽しそうな場所なのに、不思議ですね。
そして、写真をじっくり眺めていると……。
あれ?
何か、変なものが写っていませんか?
気のせいでしょうか。もう一度見てみても、やっぱり少しおかしい。
そこで、サイト内をさらに調べてみることにしました。
「お客様へのお願い」
トップページの「お知らせ」の欄に、「5/20 お客様へのお願い」というリンクがあります。
何でしょうか。開いてみると、ちょっと信じられないことが書いてありました。

ホームページ内の写真に「昭和にふさわしくない品物」が写り込んでいるとの問い合わせがあるそうです。そして、気付いた点があれば「該当箇所をクリック」してほしい、と。
……えっ?
ちょっと待ってください。つまり、写真がおかしいことを、百貨店の側も知っている?
普通の百貨店なら、写真を修正すれば済む話ではないでしょうか。
わざわざお客さんに見つけてもらおうとする理由が分かりません。これは、一体何のためのホームページなのでしょう。
誰が、何のために?
最初は、単に懐かしいCMを見つけただけでした。ところが、気付けば私は、この百貨店の公式サイトを何十分も眺めています。
CMを作り、ホームページを用意し、会社の沿革を考え、各階の売場写真まで揃える。誰かが趣味で作ったのだとしても、相当な労力です。
それに、あの写真の違和感は何なのでしょう。何となく、誰かに「気付いてほしい」と言われているような気もします。考えすぎでしょうか。
正直なところ、まだ何も分かっていません。
行ったこともない。
存在した記録すら、見つけられない。
それなのに、なぜか懐かしい。
私たちが昔の百貨店に抱いている思い出を、誰かがそっくり再現しただけなのかもしれません。でも、それならどうして、あんな不思議な仕掛けを残したのでしょうか。
誰かが、何か大切な風景を残そうとしている。そんなふうにも思えて、もう少しだけ、この百貨店のことを知りたくなりました。
もし興味があれば、ぜひご自身でも確かめてみてください。私が見落としているものが、まだあるのかもしれません。
調べてみるまほろば百貨店公式ホームページmatsaman.shop/mahoroba/(新しいタブで開きます)
